サステナブルエネルギー研究室

サステナブルな社会を目指して

"ものづくり"には多くのエネルギーが消費されます.その大半は化石燃料と原子力のエネルギーによって得られる電気エネルギーです.

いま,地球は「化石燃料の枯渇」,「CO2やフロンによる環境破壊問題」,「世界の人口増加による食糧不足」など多くの問題を抱え,それらはお互いにリンクしています.

また,2011年3月11日に発生した巨大地震による原子力発電所の事故により国のエネルギー政策の大幅な見直しが進められようとしています.

便利で快適な生活環境を維持するためには,"再生可能エネルギーの利用促進","省エネルギー機器の開発と高性能化",さらには"エネルギーの有効利用の推進"が必要不可欠となります.

サステナブルエネルギー研究室は,これらの課題解決に貢献する研究開発を推進します.

作動媒体グループ - 表面張力

吸収冷凍機の高効率化を目的として,以前より吸収器の高性能化が進められていましたが,近年は大きな進展が見られないのが現状です.また,吸収器の高性能化を目的として,伝熱促進管の開発が盛んに進められた時期がありましたが,近年ではほとんど取り組まれていません.ここで,吸収器用伝熱管に散布される吸収剤は,臭化リチウム水溶液(LiBr)に界面活性剤を微量添加したものが一般的です.これは界面活性剤を添加することにより液膜の擾乱(マランゴニ対流)が発生し,吸収性能が向上するためです.そこで,本研究ではLiBr水溶液にアルコール系界面活性剤を添加した場合の表面張力に及ぼす吸収剤温度および界面活性剤濃度の影響を明らかにすることを目的としています.

マランゴニ対流に及ぼす表面張力の影響

表面張力実験装置

供試界面活性剤

界面活性剤2成分添加時の実験結果

作動媒体グループ - 冷熱蓄熱

1日(昼夜間)のエネルギー負荷平準化は従来から国策で進められてきたほどの重要課題です.従来は原子力発電設備の運転率向上を主軸としたエネルギー政策であったので,特に夜間電力需要開発が重要視されていました.しかしながら,昨年3月11日の東日本大震災以降の原子力偏重エネルギー政策見直しや,再生可能エネルギー利用推進の流れの中においては,震災による発電設備能力不足の影響もあり,昼間の消費電力削減が最重要課題となっています.これに対して,夜間電力の有効利用システムとして氷の潜熱(融解熱)に着目した冷熱蓄熱システム(エコアイス)の導入が推進されています.当初は水を蓄熱媒体として用いていましたが,エネルギー消費効率向上の目的で,より高い温度で凝固する媒体(有機水和物)が開発され,実用化に至っています.本研究では有機水和物の結晶量に及ぼす水溶液濃度および温度の影響を明らかにすることを目的とします.

供試材および水和物構造

非凝固水溶液濃度と保持温度との関係

固相質量分率と保持温度との関係

固相融解水溶液濃度と保持温度との関係

作動媒体グループ - 冷媒吸収促進

本研究では,LiBr水溶液にアルコール系界面活性剤を添加した吸収剤への冷媒吸収量に及ぼす界面活性剤種類および添加濃度の影響を明らかにすることを目的とした研究を行っています.
冷媒吸収促進実験装置
供試界面活性剤
吸収量と第二添加物濃度の関係に及ぼす第一添加物の影響
界面活性剤2成分添加時の実験結果

熱交換器グループ - エアコンCOP

エアコンの熱交換器は長期間の使用によってその表面に汚れが堆積します.この汚れの堆積によってエアコンの効率(COP)が低下し,消費電力が増加します.そこで,熱交換器の洗浄によりCOPを改善して,消費電力量を削減する取組みが近年注目されています.一方,洗浄剤の成分によっては,汚れだけでなく熱交換器自体をも溶かす可能性があり,洗浄によるCOP低下の可能性が懸念されています.そこで本研究では,エアコンの室外熱交換器に着目して,洗浄前後のエアコンの冷房COPを測定し,冷房COPに及ぼす洗浄の影響を定量的に明らかにすることを目的としています.
エアコンCOP実験設備外観
p-h線図上の測定点
p-h線図によるCOP測定
代表的なCOP計測データ

熱交換器グループ - 熱交換器性能シミュレーション

熱交換器の性能測定結果を十分に考察するためには,流体の流れを可視化することが必要となります.ここで実験的に流れを可視化する手法は,性能測定と比べても同等以上のコストと工数が必要なため,現実的ではありません.また,解析的に流れを可視化する手法も考えられますが,従来のように研究者自身がプログラムを作成する方法は工数が過大であるため,現実的ではありません.一方で,汎用の熱流体解析ツールの進展は目覚ましく,空気や水などの単相流体に関する解析結果は十分な信頼性を有するとされています.そこで本研究ではインナーフィン型プレート式熱交換器内の流れの可視化を行い,実験結果との整合性を明らかにすることに取り組んでいます.また,送風ファンを必要としない自然対流冷却の基本問題として,物体周りの自然対流冷却の可視化を行います.
熱交換器性能解析モデルおよび条件
熱交換器性能解析結果(速度ベクトル図)
熱交換器性能解析結果(温度等高線図)
熱交換器性能解析結果(圧力等高線図)

熱交換器グループ - 熱交換器性能

一般的に熱交換器は有限資源である金属で構成されているため,省資源を目的として小型化が求められています.ここで,プレート式熱交換器は高集積化が可能な構造であるため,従来の代表的な二重管式熱交換器に比べて高性能であり,大幅な小型化が可能になります.また,従来のプレート式熱交換器は構造的に耐圧性が低く,高圧冷媒には適用できませんでした.一方でインナーフィン型プレート式熱交換器は高耐圧性を有し,これまでプレート式熱交換器が適用できなかった分野で普及しています.しかしながら,インナーフィン型プレート熱交換器は発展途上であるため,基礎的な特性データが不足しています.そこで本研究では,インナーフィン型プレート式熱交換器の性能測定を行い,性能に及ぼす構造の影響を明らかにすることを目的としています.
熱交換器性能実験設備概要
性能に及ぼす熱交形状の影響
インナーフィン熱交換器仕様