バイオマテリアル研究室

からだに優しい生体材料をつくる

病気や事故によって人工関節や人工歯根を移植することがあります。これらはチタンやステンレスの合金なので、骨と結合しない場合は接触する骨が摩擦摩耗して緩みの発生や、骨破壊が起こります。また、金属アレルギーを発症するヒトも居ます。どちらも再手術になります。

ヒトの骨や歯は、「生体用アパタイト」、「コラーゲン」、「体液や血液」で出来ています。そこで、合金とアパタイトを複合して骨との結合反応を促進しています。それでも、大腿骨の人工関節手術のリハビリ開始は6ヶ月後です。

当研究室では、チタン・メディカル・アパタイト(TMA)という新しい生体用アパタイトを使用し、TMA真空焼結体を製作し、CAD/CAM加工による代用骨部品の製作およびpHの影響を調べています。そして、再生する代用骨の製作を目指します。

「TMAの焼結体」は、国際特許公開中でアメリカ、オーストラリア、中国で特許を取得しました。

新しい再生代用骨に及ぼすpHの影響を調べる

in vitro試験による経過時間とpHの関係
pH7とpH9の溶液でのTMAとHApのpH値は殆ど変化なく安定していた.一方,pH4の溶液でのTMAとHApのpH値は,共に7日まで緩やかに上昇し,TMAはpH5.5付近で,HApはpH5.0付近で安定した.さらに,pH2の溶液でのTMAとHApのpH値は,共に3日以内が急激に上昇し,約14日後にはpH4の溶液と同様にpH5.5付近で安定した.ヒトの体内におけるpH値は緩衝作用により7.40±0.05に保たれる.この範囲を超えると錯乱や痙攣などの症状が現れる.本実験の中性・アルカリ性環境下のTMAとHApの焼結体は, 3ヶ月間(84日) pHの変動は殆どなかった.このことからTMA真空焼結体は人工骨に利用可能と考えている.一方,本実験での酸性環境下のTMA真空焼結体のpH値はpH5.5付近で安定した.これは,ヒトの歯牙がpH5.6以下の環境下で溶解するからであり,本実験結果と一致する.また,口腔内のpH値は唾液の緩衝作用により中性(pH6.7~7.6)であるが,ストレスや食事によって一時的に酸性になり歯牙を溶解する.このことから,TMA真空焼結体を人工歯牙に使用する場合は,口腔内で実際の歯牙と同程度の酸性の影響を受けると考えられる.
TMA焼結体はチタン化合物の焼結体として,国際特許公開中で,米国(US7803194B2),オーストラリア(AU 2004299390B2),中国(CN100534897C)で特許を取得した.

CAD/CAMによるTMA真空焼結体製の再生骨部品の開発

3D CADで作成した
骨接合プレートです
CAD/CAMで歯や骨の
加工を確認します
3DモデリングマシンでTMA
真空焼結体を切削加工しています
この電気炉を使って1300℃で
TMA真空焼結体を作ります。
切削加工で作製したTMA真空焼
結体の生体部品の一例です。
TMA真空焼結体は、直径1cm
の円柱が自動車2台以上の
約2,000kgの加重に耐えます。
それでも、切削加工は出来ます。
日本ウサギのあご骨に埋植した
TMA真空焼結体とチタン(Ti)金属です
(1月後、協力:歯学部)。
7羽のウサギを使い
ましたが、拒絶反応は有りません。
TMA真空焼結体はチタン金属と
同等の生体親和性が
有ります。