計測・診断システム研究室

計測・診断システム研究室のコンセプト

「ものづくり」を支えるために

「安全・安心な生活」を支えるために

「ヒトと自然の環境」を支えるために


「安全・安心な生活」を支えるために

横田 理

本研究室では,安心・安全な生活を送るために,身の周りのものを計測し,その診断を行うシステムを構築しています.すなわち,(1)医用機器,(2)再生エネルギー,(3)ものの表面状態,に関する分野であり,これらの計測機器の開発,計測と診断する方法の提案、およびデータ解析とその評価する方案の作成を目指しています.

空気噴流により柔軟物表面に発生したくぼみをレーザ光で計測

透明シリコーン半球と光センサによる硬軟判別

現在,光導波路型接触センサにはピラミッドアレイ状センサや球面状センサ等が開発されていますが,これらは被測定物が触覚部よりも硬い場合でなければ測定できません.本研究では,光センサとシリコーン半球の微小接触変形を利用し,被測定物の硬度に関わらない,硬軟判別を接触で測定できるデバイスの開発を行っています.

脈波測定機器の開発・評価

現在の医療現場では,西洋医学と東洋医学を基にした検査・治療が行われています.東洋医学には,脈診と呼ばれる指による触診で健康状態を推測する診断法があります.この診断法により病気の予防のための治療方針を立てることができますが,医師の独自の判断や経験,理論に頼る部分が大きく客観性や再現性に欠けます.そこで,本研究の最終目的は東洋医学脈診法の評価方法を実験結果に応用し,簡単に自分の健康状態を測定できる装置の開発を目指しています.

生体計測用探り棒の基本的特性

現在,X線CTやMRIなどに代表される体内を診る医療機器は高価であり,かつ安全性が保障さていないものもあります.また皮膚表層や胃壁などを検査する場合,安価で,かつ安全な器具の利用が求められることもあります.そこで透明シリコーンゴム半球状レンズとカメラを使った簡単な生体部位計測用の探り棒を提案し,開発を行っています.なお,この原理は滑り落ちる物体を掴みなおすロボットアームの指先のセンサとしても応用できると考えています.まず,第一の基礎段階として,透明シリコーン半球レンズを利用した実験装置を作製して,半球レンズが試験片に押し付け,引きずられたときの試験片と半球レンズの接触面の変形や,荷重点の移動,相対変位等の基本的特性の確認をしています.

柔軟接触センサによる表面性状の認識に関する実験

ヒト指は物体に接触・移動する際の表面性状を調べられる.そこで,接触部,円筒形のシリコ-ンゴム,およびシャフトより構成される柔軟接触センサを考えます.この接触部は半球型,円錐型,およびかまぼこ型の形状をしていて,その中央部にシャフトが一方向に突き出た構造になっています.これにシリコーンゴムを取り付けた形で組み込まれています.このセンサを用いて被測定面を計測すると,シリコーンゴムの変形に伴い,シャフトの移動量を測定しています.

風力・水力発電ハイブリッド発電システムの開発

本研究では,ダムに変わる小規模で落差の小さい,すなわち位置エネルギに依存しない発電システムの開発を目指しています.さらに,このシステムを風力発電にも利用可能なハイブリッドな電気エネルギの創出にも取り組んでいます.図示するように,回転軸を回しカップリングによってモータに回転を伝えることにより,電気エネルギを得ることができます.回転軸の角度を変えることで,水中での使用も目指しています.

スクラッチ法による溶射被膜及び鉱石の特性

現在,高硬度,高強度,耐摩耗性を向上させる有効な表面改質技術として,溶射被膜が使用されています.この溶射技術は,航空機,プラントなどの大型構造物から,機械部品,自動車部品などの小型構造物まで様々な分野に広く利用され,産業界でも重要な役割を担っています.しかし,作製された溶射皮膜は半溶融粒子やボイドが現われたり,さらには過酷な状態で使用されたりするので,皮膜と基材の密着性,皮膜自体の割れなどが問題になっており,その評価方法は十分に確立されていません.そこで,本研究では作製した溶射皮膜試験片のスクラッチ試験を行い,発生したAE信号より皮膜の強度や密着性の評価可能かどうか検討しています.

軟体物のスティック・スリップ現象についての研究

軟体物(シリコーンなど)が剛体と干渉する際に,どのような挙動を示すかの詳しい現象は明らかにされていません.そこで本研究では,各種軟体物により作られた半球レンズを剛体に押し付け,変形する際の圧力分布の状態を探っています.また,それを観察する装置を考案し開発を行っています.

空気噴流による柔軟物の形状計測

本研究は,柔らかさに関する感覚的評価を数値化して,客観的に評価できる測定法の確立と装置の開発を目的としています.すなわち非接触,非破壊を前提として,柔軟物に空気の噴流を吹き付け,それにより生じるくぼみの形状を2次元形状記憶センサにより計測する柔軟物の表面テクスチャーの試験方法の提案と装置の開発です.

レプリカ法による加工面の形状評価

表面粗さ測定法は比較測定法,接触式粗さ測定法,非接触式粗さ測定法の3種類に大別されています.しかし,これらは測定装置が高価であり,試験材料に測定痕が残る等の問題があります.そこで本研究では,安価なレーザー光による粗さ評価法の確立を目指しています.

平成23年度 卒業研究生

横田教授指導学生

「ヒトと自然の環境」を支えるために

長尾光雄

快適に暮らすためには,内的または外的な要件が必要です.例えば,心身の健康や静粛な環境および自然環境が上げられます.本研究室では,医療環境・音環境・自然環境を改善する計測・診断用機器の研究に取り組んでいます.

機械システムから放射される音の予測と制御に関する研究

製品設計や開発では,起こり得る不快な音を予測しこれを制御する技術は不可欠であり,製品の付加価値にもなっています.予測手法の提案に取り組んでいます.用途は,産業機械・家電製品の静音化,室内音響特性の改善や静音化,機械の設計や開発で発生する騒音の予測やシミュレーション,騒音対策や制御技術などです.快適・静音環境を目指します.

減速機プランニングの教材開発に関する研究

「ものづくり」に関連した一連のシステムについて,基礎から応用まで学習するシステム開発の試行を行っている.「ハスバ歯車増・減速機」を取り上げ,具体的なプロセスに基づく関連資料の教材開発を進めています.用途は,機械設計製図教育,ITツールの習熟,e-learningなどです.機械プランニング手法の修得を目指しています.

固液移送ポンプシステムに関する研究

渦流型流体ダイオードを用いてメンテナンスフリーを目指した移送ポンプシステムの試作開発に取組んでいます.用途は,固形物と溶液などの混合物移送要素機械,上下水道,石油・化学プラント工場,薬品・劇薬プラント関係,土木建設工事,原子力関連施設(放射能廃液類),医療機器などです.人体・自然環境に安全な流体移送要素を目指しています.

肩こりなどの筋硬度を計測する装置の開発に関する研究

受診者と施術者間において治療の硬軟を数値化し,健康管理の計測装置の開発を行っています.用途は,肩こりや腰痛の臨床現場,理学療法,リハビリテーション,スポーツドクター,トレーナー,工業的用にも多々.健康で快適な生活を目指しています.

膝関節移植腱の関節内張力計測方法の開発に関する研究

既存の施術過程で用いることを前提とした,膝前十字靭帯を再建する際の固定後の関節内張力が計測できる手術支援計測システムの開発を進めています.用途は,生体の筋組織や靭帯,工業用製品などです.膝関節手術支援の計測を目指します.

脊椎部位の硬軟計測方法の開発に関する研究

既存の施術過程で用いることを前提とした,脊椎を構成する部位の硬軟を数値化する計測装置の開発を進めています.用途は,外科関連臨床現場,工業製品などです.脊椎の物理量計測を目指します.

変形性関節症の早期診断支援装置の開発に関する研究

早期初期診断のための実施方法や診断計測システムの開発に焦点を絞り,集団検診など多数の受診者を対象とした簡易的な診断計測装置の開発を進めています.用途は,変形性関節症診療の臨床現場,理学療法,工業的には防犯・診断・予測・監視などです.予防医療による健康寿命の改善を目指しています.

「ものづくり」を支えるために

齋藤明徳

工作機械は機械部品を作る機械であるため,母なる機械と呼ばれています.現在,身近にあるほとんどの工業製品の製造に工作機械は関わっているといっても過言ではありません.本研究室では,工作機械を中心に,より良い生産システムの開発を目指して,加工と計測に関する研究に取り組んでいます.

5軸制御マシニングセンタのシミュレーションモデル

アブレシブウォータジェット加工によるCFRPの切削特性

ボーイング787などにも使用されているCFRPのアブレシブウォータジェット(AWJ)加工による切削性能を研究しています.
CFRPのAWJ加工は,国内では,それほど多用されていないのが現状です.エンドミルなどの切削工具を用いた加工との違いを明らかにしながら,その基本特性について調べています.
多関節ロボット形WJ加工機
AWJ加工で切断したCFRP,A5052,CFRP/A5052

マイクロスケール工作機械の機上計測

マイクロスケール工作機械において,加工する前の工作物の位置,加工後の工作物の形状を加工機上で計測する方法を研究しています.
マイクロスケール工作機械を試作し,その大きさに見合った測定システムを提案することを目的としています.測定システムは加工機の機上に構成し,μmからサブミクロン程度の測定精度を実現することを目指しています.
研究室で試作したマイクロスケール工作機械

多軸工作機械の性能評価

代表的な多軸工作機械の5軸制御マシニングセンタにおいて,機械がもつ誤差を評価する方法を研究しています.
5軸制御マシニングセンタが広く生産現場に導入されるようになってきていますが,通常のマシニングセンタに存在しない旋回2軸を有するために,その誤差を評価することが重要になります.より簡便な評価方法,利便性のある測定装置の開発を目指しています.
研究室で開発した非接触式の運動精度測定装置